TOP10レベルへ 錦織圭の内面の進化
2012年全豪オープン4回戦ベスト16。錦織圭vsツォンガ戦。ハイセンスアリーナはほぼ満員。試合開始前から気温は30度を超える。コート上は40度以上だろう。
第一セットを2-6で奪われた後の第二セット。ツォンガのアドコートからのフラットサーブが錦織のバックハンド側のコーナーに決まるが,不自然にバウンドが低かった。これを錦織は見逃さず、ボールが弾んだ部分のコートサーフェス層の下に、空気が溜まって浮いているのではないかとアンパイアに即座にアピールした。
このアピールが認められ、大会側がサーフェスの表面にドリルで小さな穴を開け空気を抜くために試合が10分近く中断するという珍しい事件があった。
この中断後、それまでツォンガの勢いに押されていた錦織は明らかに攻撃の主導権を相手から奪い返した。満員のスタジアムで即座にアンパイアにアピールし体勢を立て直す間を取るチャンスを逃さなかったところに、勝負師としての昨年からの急成長ぶりが現れている。
ツォンガは錦織の徹底したバックハンド狙いの術中にはまり苛立っている。ツォンガは錦織のようなクレバーな戦術をとり相手の力を封じるプレーヤーを苦手とするようだ。
錦織はツォンガと同じパワフルなフォアをより小さな構え、完全に静止した構えからの鋭い振り抜きで繰り出せるので、ツォンガはコースを予測出来ない場面がたびたびあった。
第三セット途中から錦織が強打し始めそれが決まるようになった。
第四セット9ゲームめ。ブレークを狙う錦織が見事な反射神経を見せたボレーボレーの後のクロスへのパッシングショット。スタジアムが熱狂する。しかしツォンガもここでガッツを見せて踏ん張り、ブレークを許さずセットを取りファイナルセットへ。
凄い試合になった。
錦織は炎天下ファイナルセットにもつれ込むことを試合前から覚悟して体調管理をしてきたように見える。疲れが動きに出ていた3回戦よりも引き締まった表情だ。
ファイナルセット第四ゲーム。勝負どころと見極めた錦織はレシーブからアタックしてツォンガのサービスをブレーク! ここで一気にゲームの流れを掴む。
第7ゲーム。猛アタックをかけるツォンガのブレークポイントを何度もしのぎサービスキープする錦織のメンタルの強さ。
そして最後まで試合の主導権をツォンガに渡さず、詰め将棋のように完璧な勝ちきり方をした。この試合で完全に一皮むけた感じがする。
ファイナルゲームはツォンガがあたかも格下の選手であるかのように見えた。
グランドスラム4回戦で、過去に一度負けている錦織に対して対策を立ててきたツォンガに、猛暑の中、フルセットで勝ちきったことで、TOP5以下の選手とは互角に戦えるレベルに錦織圭が突入した瞬間だった。
握手の後、コート中央にゆっくり歩きながら満員の大観衆に向かってゆっくりと両手を挙げ、さらに右拳をやったと振り抜きながら見せた笑顔がなんとも良かった。
それはこれまで彼が見せたことがなかった表情だった。3時間半に渡り自分の心を制し続けた末の達成感に浸る人間の至福の表情だったのではないだろうか。
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